STEAM教育では、現実社会における課題を探究して解決策を提示していくことが大切なことになってきます。学校という狭い空間にとどまらず、外の世界とつながっていくことが、STEAM教育の大事なポイントです。才教学園では、多数の企業・団体・個人と協働することで本校独自のSTEAM教育を展開していきます。
本校が今まで行ってきた教育内容と非常に親和性の高いSTEAM教育を導入することで、教育内容の更なる充実・発展を図り、21世紀型スキルを習得していけるようにします。低学年から各教科の学習にiPadを積極的に活用し、学習の幅を広げ理解を深めます。課題解決のため、多面的な視点からアプローチしたり、身につけたスキルを横断的に使ったりして、高学年からの本格的なSTEAM型プロジェクト学習の基礎的な力を育んでいきます。
低学年では従来の読み書きの基本的な学習に加え、iPadを使った学習を取り入れることで、高学年から始まるSTEAM型プロジェクト学習の準備を行っています。
デジタルデバイスに親しむため、例えば1年生の生活科の授業では、あさがおの観察を従来のワークシートに加え、一人ひとりがiPadで写真を撮って、記録を残しました。
また1年生から始まるプログラミングの授業では、生徒たちはレゴブロックを組み立てて作ったロボットを、iPadで巧みに操作することができるようになりました。
その他、あらゆる教科で教材や写真、生徒のワークシートなどを、モニターに映して全員で共有し、学習の幅が広がりました。
才教学園の名物イベントのひとつに2年生による「さいきょう商店街」があります。
さいきょう商店街とは、生徒が本物さながらのお店を作り、自作の商品を販売するイベントです。本物のお金のやりとりはありませんが、生徒たちはお客さんになる1年生にアンケートをとり、どのような商品が売れそうかを調査して、値段設定を考え、広告やチラシを作成します。
「お店を出す」というテーマに多面的な視点からアプローチし、いくつものスキルを横断的に使ってアウトプットすることは、高学年から本格的に始まるSTEAM型プロジェクト学習の土台となります。
3年生になると日頃の授業の中でiPadの活用が欠かせなくなります。iPadを活用することで、発表の仕方や共同学習の方法がこれまでと大きく変わりました。例えば、発表では一人一人が自分のiPadでスライドを作成します。また、体育の授業では、動作解析アプリ「プレポス」を使用することで、自分自身で体の動きを客観的に分析して解決策を探ったり、グループでアドバイスをし合ったりすることで、探究学習や協働的な学びに役立てています。
4年生は「総合的な学習の時間」で行う調べ学習として『長野県フェスティバル』を行いました。
テーマは「長野県の良さや魅力を伝えよう」。2~3人ずつ17のグループに分かれ、県の強みや課題は何か、県の良さを守っていくために何ができるか、県を盛り上げるために何ができるのかなどを話し合い、準備を進めました。
準備では、「調べる」「まとめる」「発表する」の全工程において、1人ずつ所有しているiPadを積極的に活用しました。インターネット検索を通して詳細な情報を見つけたり、実際にその場所に行って写真や動画を撮影したり、様々な方法やアプリケーションを駆使しました。
こうしてたくさんの素材を集めた子ども達は、多くの人に長野県の良さや魅力を発信したいと、独自のスライドやPR動画、Webページ、パンフレットなどを作成しました。
今回の活動では、調べたことのアウトプットだけでなく、効率的に伝えるための工夫や「見せながら伝える」話し方の工夫、そして、友だちと協力しながら互いを高め合うことなど、様々な学びがありました。
5~8年生は、それまでに習得したSTEAM教育の土台を発展させ、STEAM型プロジェクト学習を行っていきます。各教科の学びと研修旅行での体験などを結び付け、「防災」「平和」といった大きなテーマに年間を通して取り組みます。21世紀型スキルが身について仲間や企業などとの協働力が高まり、発表の場での表現力もより進化します。
5年生ではプログラミングのスキルを活かし、レゴの自動運転車を作ります。座学としてのプログラミングを発展させて、実際に作成したプログラムを使って機械を動かしてみます。そのためにはまずプログラミング的思考を身につけなければなりません。
日頃何気なく使っている機械がどのように動いているのかを考え、自分でもプログラムを組んでレゴで作った自動車を動かしてみます。
このプロジェクトはトライアンドエラーの繰り返しですが、各グループで協力し合いながら納得のいくプログラムを完成させます。1年生から学ぶプログラミングの一つの集大成となるプロジェクトです。
仲間と協力して問題解決を目指す
佐藤 くるみさん
(6年)
5年生はSTEAM教育の一環としてEV3をを活用し、プログラミング学習を行いました。車のデザインやプログラムの組み方など難しいことがたくさんありました。しかし、仲間と切磋琢磨しながら、問題解決に向け取り組むことで、達成感を味わうことができました。
6年生は例年、研修旅行で東北地方に行き、実際に震災に遭われた方からお話を伺う等、年間を通して防災学習に取り組んできました。
学生ボランティア団体・IVUSA様とのコラボが始まり、実際に大学生の皆さんが来校し、6年生と一緒に避難所づくりを行いました。
各グループに「高齢者がいる家族」「女性だけの家族」といった特徴が与えられたほか、共有部分として学習スペースや更衣室、掲示板やゴミ捨て場の設置などの課題が出されました。研修旅行での経験もあり、至る所に思いやりが垣間見えた避難所づくりになりました。
いつ、どこで起こるかわからない災害。「もしも」のときに慌てず、考え、判断し、行動し、生き抜くための手段を、このプロジェクトから学ぶことができました。
避難所製作で養われる力
内山 雄介君
(7年)
才教学園の6年生は「災害」について1年間学びます。2学期にはIVUSAさんと共同で避難所製作を行い、6年生一人ひとりが災害時における対応力を身につけます。私たちは机上では学べない体験をすることができました。
松本市教育文化センターが開催する「星空プログラミング」講座へ参加しプログラミングの実践学習を行いました。半年間(全4回)、番組作成に取り組みました。
このプロジェクトは、プラネタリウム番組作成用のソフトを使い、番組をプログラミング制作しました。最終目標は、作成した番組を通して自分たちのメッセージを上映により伝えることでした。初めからストーリーや台本が用意されているはずもなく、何もかもが0からのスタートでした。
2~3人のチームを母体に作成しますが、作業中には理科や技術以外のトラブルも続出しました。もちろん、チームでこの困難な状況は乗り越えていきますが、センターの方々や他のチームからのアドバイスは大きな力となりました。作成中はまさに試行錯誤の連続でした。最終回では、保護者をプラネタリウムへ招待した上映会を設け、運営や進行もすべて自分たちでプロデュースしました。天球を通して伝えるメッセージは壮大で、夢や希望や感謝に溢れていました。
このプロジェクトを通して、一つのストーリーを作り出すにも様々なことが複雑に絡み合っていることや、0から1を創り出すことの困難さや、その困難を仲間と共に解決し乗り越えていく術を学びます。
皆の想いが天球で輝く
新保 芙佑香さん
(8年)
星空プログラミングは、自分でプログラミングしたものが大きな天球に映し出される壮大なSTEAM学習です。私たちは、特に「相手に想いを届ける」ことを大切に取り組みました。チーム内で協力して天球の見せ方、ナレーションなど試行錯誤して作品を完成させました。これは、私にとって忘れ難い貴重な体験になりました。
8年生のSTEAM型プロジェクトは、「さいきょう祭」のミュージカルを自分達で創り上げることが最大のプロジェクトとなります。脚本から、音楽、衣装等々、細部にわたる打ち合わせを仲間同士で繰り返し、試行錯誤を繰り返しながらミュージカルを創り上げていきます。
その他にも、昨年度は株式会社math channel様とのコラボレーションで、「音楽に潜む数学を体験」というテーマで、iPadアプリ「ガレージバンド」を使って、美しい和音の構造に理論的にアプローチする学習を行いました。図形を用いて音を視覚的にとらえることは、音符や楽譜を追うのとは一味違う楽しさがあり、刺激的なSTEAM型プロジェクト学習でした。
数学と音楽のコラボレーション
百瀬 友惺君
(9年)
音楽の授業の音楽制作とは違い、iPadを使ったり友達と意見交流したりしたことで、楽しく学ぶことができました。また、自分から「これをやってみよう」と考え実践することで、積極性も身に付いたと思います。
3大行事のひとつであるプレゼンテーションコンテストは、調査・研究・発表というプロセスを毎年繰り返し学び、将来不可欠なプレゼンテーション力を身につけていきます。プログラミング授業は全校生徒を対象とし、6年生以上は、さらに高度な課題を解決するために、プログラム言語を使い高度な思考力を身につけていきます。
プログラミングは世界規模では、多くの国々が必修科目として取り入れていた中、日本でも小学校2020年度(令和2年度)、中学校2021年度(令和3年度)から学習指導要領で必修の領域として明記されました。本校では、それに先立ち2017年度(平成29年度)よりプログラミング授業を全校に実施しています。特に昨年度からは、iPadを生徒全員が持つことになり、今まで以上に弾力的に対応できるようになりました。
1、2年生はレゴブロック教材「lego WeDo」を使用し、プログラミングの意味と仕組みを体験的に学びます。3年生以上は、世界的に普及しているプログラミング教育ブラウザ「コードスタジオ」に、学校として登録しています。生徒個人がアカウントを所有した中、それぞれのレベルに応じた課題をクリアしていく形で、コーディング(コマンドブロックの組み合わせ)に取り組んでいます。
初めのうちは、「課題の解決にはロジックがあること」を、パズルを解いたりする中で感覚として身につけていきます。レベルが上がるにつれて、「繰り返し」、「もし(if)」などの関数を駆使するものになり、最上位レベルのクリアには「1つのコマンドに複数の関数を組み合わる」など、高度な知識が必要になります。
他にもSTEAMにおける各学年の実践では、実際にプログラミングを駆使した活動も行っています(5年:legoで自動運転自動車)。
本校教育理念「未来を共創する人に」の達成にも大きく関わってきますが、ロジカルに物事を考えるプログラミング的思考は、特に理系の分野に関わるわけでなくとも、21世紀を生きていくには必須のスキルと言われています。今後も本授業を通してプログラミングの基礎を学びつつ、STEAM等の活動を通して実践的な場面で知識を生かす場を作っていきます。
正解した時の達成感
等々力 瑛二君
(6年)
英語で問題文が書かれた問題や複雑なプログラムが必要な問題など、その生徒のレベルにあった難易度の問題が出され、正解するごとに難易度は上がります。そのため、難しい問題を正解した時は達成感があり、楽しくプログラミングを学ぶことができます。
「速読」は、日本速脳速読協会の開発したトレーニングソフトを用いて脳の処理能力を高め、数々の学習効果が期待できる能力開発プログラムです。(3~9年生で実施)
速読とは、『斜め読み』や『飛ばし読み』といった概略把握的な読み方とは違い、内容の理解度や記憶力はそのままに、読書速度だけを引き上げます。同じ時間でこれまでの数倍の量の読書や学習ができるようになります。このことはテストや入試でも読む時間が短縮でき、余剰時間を考えたり見直したりする時間に充てられ、受験で圧倒的に有利になります。
また、速読は脳を鍛えるトレーニングでもあるため、「記憶力」や「集中力」、「思考力」など脳の総合的な能力を底上げする効果も期待できます。6年生以上は英語の速読教材を導入し、多読をベースに英語長文読解能力を向上させるトレーニングも行います。
現在、自宅での速読学習も可能になっています。
日常生活にも生かせる速読
田中 壱君
(令和5年度卒業・松本深志高等学校1年)
速読を通して身に付いたことは、情報処理能力です。当初は、短時間で多くの情報を頭に入れることが苦手でしたが、速読のトレーニングによって、速く正確に文章や図を見て、その要点を掴むことができるようになってきました。効果が実感できると、1回1回の速読の時間を大切にすることをより心掛けるようになりました。速読力を鍛えることは、テストではもちろん、日常生活でも様々な場面で有利に働くと感じました。
毎朝10分間、学級内で一人ずつ日替わりで、ことわざや故事のいわれやその背景、歴史上の人物の生き方や発明発見のエピソードなどを調べて発表します。先達の経験や言葉、生き方に触れ、自分と照らし合わせることで、今の生き方や将来の指針などの自己発見にもつながります。
第Ⅰ期(1~4年生)の生徒達も、1年間で学んだこと、自分自身の生い立ち等をまとめて、2月の授業参観日に学習発表会を行っています。発表の経験を積み重ね、5年生からのプレゼンテーションコンテストにつなげていきます。
授業をご覧いただいた保護者の方々から寄せられた感想をご紹介いたします。